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3Dプリンタ

2022年の年始に3Dプリンタを購入しました。
Creality社のEnder3 V2という中華のFMD方式のプリンタです。
壊れたときに自分で直したり、いろいろ改造したかったので組み立て式のものを選びました。

3Dプリンタの価格はピンきりですが、Ender3 V2は結構安いですね。
Amazon初売りのポイントアップ&ちょうどセール対象になっていたこともあってポイント込みで2万円台でした。

スペック:
・出力サイズ:220mm x 220mm x 高さ250mm
・対応フィラメント:PLA、TPU、PETG
・最大温度:ホットエンド255℃、ベッド100℃

カスタマイズ

他のページでもたくさん書かれているように、残念ながらこのEnder3 V2は色々とイマイチで、手を加えたくなる部分が結構あります。
「買ったプリンタはそのままの状態で使いたい」という人に後継機の Ender3 S1 や S1 Pro をおすすめします。

カスタマイズ① ファンの騒音対策

購入前にファンの音がうるさいと聞いても「印刷中ぐらいうるさくてもいいや」と思っていました。
でも実際動かすと予想以上にうるさくて、我慢できず別のファンに変えることに。。

電源

電源ファンの電圧は12Vだったので、12Vの9cmファンに交換します。
Ender3 V2の電源ユニットは窒息しそうな作りなので、エアフローがよくなるようにカバーを印刷します。
印刷中に突然爆音になっていたのはここのファンかもしれません。
この改善でコンデンサの寿命も伸びることでしょう。

メインボード

メインボードのファンは24Vで、24Vの9cmファンはあまり選択肢がないので24Vを12Vに変換して12V 9cmファンにします。
24V → 12V の変換は、3端子レギュレータ+コンデンサx2+保護ダイオードx2でできます。部品代は120円ぐらい。

Amazonでも売っています → こちら (テスターがない方はこちら)

ホットエンド

ホットエンドとフィラメントの冷却用それぞれに4cmのファンが付いていたので、24V 6cmファン1個にして、6mファンからホットエンドとフィラメント冷却の両方に風が入るようなホットエンドカバーを3Dプリンタで作ります。

なかなかカッコいいのがデザインできました。
重くならないようにメッシュ状にしています。
印刷に使ったPLAは熱に弱く60度ぐらいで柔らかくなってしまう素材ですが、長時間の印刷でもホットエンドに近い部分(フィラメントの冷却用の吹出口付近)でも溶けたりはせず問題はなかったです。

19dB/13CFM の 6cmファンを追加。
無音ではないですが、だいぶ静かになりました。
グリルはCustomizable Fan Grill Cover(Thingiverse)からいただきました。

カスタマイズ② CR Touch

オートレベリング(プラットフォームの高さのばらつき測定)を行って印刷精度を高めることができます。
曲がるプラットフォームではなく、ガラスなど硬いプラットフォームを使っているのであれば不要かもしれません。

BL Touchよりも CR Touchの方が精度が高いと言う人もいればその逆もいます。

この動画の5:55~のConclusionのところでは、CR Touchの方がBL Touchよりも標準偏差が小さく精度は良いと言っていますね。
そのまま続きを見ると、両者の違いとして、BL Touchはプローブが自動で引っ込まず、CR Touchは自動で引っ込むと言っていて、端から印刷する際にもしBL Touchのプローブが出た状態だとプローブを傷めてしまう可能性があるようです。だいぶ衝撃的な映像でしたw
どうすればこのような状況になるのかはわかりませんが、これを見てしまうとCR Touchの方が長く安心して使えそうです。

取り付ける場所の注意点ですが、オリジナルのホットエンドカバーに付けたり、取り付ける部品を3Dプリンタで印刷している方がいますが、動いてしまうと測定精度に影響が出るので、純正の金属製のパーツを使ってホットエンド側のプレートにしっかり固定ましょう。

カスタマイズ③ フィラメントガイド

フィラメントが少しねじれたりすると、フィラメントがZ軸に触れて油が付いてしまいます。
Thingiverseで似たようなのはたくさん公開されてますが

  • Z軸の油がフィラメントにつかないように壁をつける
  • ネジを緩めるだけで付けられる

を満たすものを自分で作ってみます。

CR Touchを付けたらZ軸のマイクロスイッチが1個余るので、後日それを使ってフィラメントガイド兼フィラメント切れセンサーを作ろうかと思います。

カスタマイズ④ 印刷終了時に自動で電源を切る

印刷が終わったら自動で電源が切れるようにします。
Y軸のV-Slotの手前側にスイッチを取り付け、印刷後にベッドを手前側に移動させればベッドのホイールがスイッチに当たって電源がオフになる仕組みです。
電源スイッチの大きさのケースを3Dプリンタで作って、V-SlotにTナットで固定しました。

スイッチを割り込ませる場所は、既存の電源スイッチの裏側のACラインに、

こんなコードがあるので、このコードを抜いてスイッチを挟めばOKです(平型端子メスx2が必要)。

下の図のように、ベッドが手前に移動すると、ホイールによってスイッチが押される位置にスイッチを設置します。
裏のスイッチを常時ONにすれば普段の電源ON/OFFも手元でできるので便利になりますね。
なお、CR/BLTouchでのオートレベリング中や印刷中に電源が切れないよう、ベッドがY=220の位置に移動してもホイールがスイッチに触れない位置に取り付けます。

印刷完了後にベッドをY軸方向手前に移動するようスライサーソフトにGコードを設定します。


G91 ;Relative positionning
G1 E-2 F2700 ;Retract a bit
G1 E-2 Z0.2 F2400 ;Retract and raise Z
G1 X5 Y5 F3000 ;Wipe out
G1 Z10 ;Raise Z more
G90 ;Absolute positionning

G1 X0 ;Present print
M104 S0 ;Turn-off hotend
M140 S0 ;Turn-off bed
G4 S120 ;Sleep 2min for cooldown
M106 S0 ;Turn-off fan
M211 Y1 S0 ;Disable software endstops for Ymax
G1 Y230 ;Power off
下から3行目の「G4 S120」で、ホットエンドが熱いまま電源を切らずに、2分クールダウンさせて常温に戻しています。
オールメタルのホットエンドでは不要かもしれません。
また、下から2行目の 「M211 Y1 S0」により、ソフトウェアで制御されているベッドの可動範囲の上限(Y軸手前側)を解除しています。
これを行わないとG1コードでYを220以上に設定しても220の位置でベッドが止まってしまいます。
このことに気付くまで結構時間がかかりました。

カスタマイズ⑤-1 無線化(FlashAir)

無線化の方法は色々ありますが、TOSHIBAのFlashAirを使うと簡単でした。
Ender3 V2 + FlashAir(W-03) で問題なく無線化(PCでエクスプローラを使って、WiFi経由でSDカードにgcodeファイルをコピー)できています。
FlashAirはもう製造されておらず、新品はとんでもない値段ですが、W-03 8GBであればフリマ等で安く手に入るので1枚持っておくと便利です。

SDカード接続

Ender3 V2はマイクロSDなので、マイクロSD → SDに変換する延長コード(AliExpressで200円前後)を使って変換します。
カバーは Creality Ender 3 PRO Compact SD Card Adapter Housing(Thingiverse)を印刷しました。

ネットワーク

普段使うPCはルーターまで有線接続ですが、マザーボードに無線機能があります。
今回はFlashAirをAPモードで動かして、PCからSDカードにつなぐようにしました(WiFi接続がメインの場合はAPモードではなくSTAモードの方が便利です)。
事前にSDカードのWiFiに「自動的に接続」をチェックして接続しておけば、印刷するときは

  1. 3Dプリンタの電源を入れる
  2. タスクトレーに常駐している FlashAirDrive を右クリックしてメニューからFlashAir接続を選ぶ

を行うだけで、FlashAirDrive がSDカード内の中身をエクスプローラで表示してくれます。
なお、FlashAirDriveというソフトは、FlashAir設定ソフトウェアで「FlashAirドライブ設定」を行うと、勝手にインストールされるソフトです。

また、念のためPC側ではWiFiインタフェースのメトリック値を有線のNICよりも高くしておきました。
route printでスタティックルートを確認しましたが、自動で正しく設定されていたので、特に手動でルートを追加する必要はなさそうです。

FlashAirのCONFIG設定

APモードで動作させるCONFIGファイルの設定は以下の通り。

APPAUTOTIMEの値を 0 にしないと、プリンタ電源ON後に暫く放置しているとWi-Fiが切れてしまいますので APPAUTOTIME は 0 にしましょう。
→ FlashAirToolからは 1分~30分 からしか選択できないため、0 を指定するには/SD_WLAN/CONFIG ファイル(隠しファイルになっています)をテキストエディタで直接開いて変更します。保存後はSDカード抜き差しすれば設定が反映されます。


[WLANSD]
DHCP_Enabled=NO 
IP_Address=192.168.250.250
Subnet_Mask=255.255.255.0

[Vendor]
APPMODE=4
APPSSID=(SSID)
APPNETWORKKEY=(ネットワークセキュリティキー)
APPNAME=FlashAir
UPLOAD=1
WEBDAV=2
VERSION=FA9CAW3AW3.00.00
LOCK=1
TIMEZONE=36
DNSMODE=0
APPAUTOTIME=0

FlashAirなので192.168.250のネットワーク!

カスタマイズ⑤-2 無線化(その他の方法)

FlashAirでうまく動作したのであまり調べていませんが、無線化する方法は他にも色々あるようです。

OctoPrint

Raspberry Piを使ってOctoPrintを動かすのは有名ですね。

タイムラプス動画を撮りたい方はこの方法がいいかも。

BIGTREETCH TF/SD Cloud

FlashAirと原理は同じで、SDカードのI/Fを付けたESP8266を使ったモジュールでWiFi化している方もいます。
もともとその用途で作られたモジュールみたいですね。

Ender3 V2で動くかはわかりませんが、電源や速度に問題がないならこれもアリですね。

自作する

自作してみたい方はこちらを参考にどうぞ。

動いたときの感動はこれが一番でしょう。

Creality Box / Creality Smart Kit

一応CrealityからもWiFi化するHW製品がリリースされています。

ただ、対応ソフトはAndroid/iOSのみ?
PCから使えるのかはよくわかりませんでした。
PCから印刷できないのであれば逆に不便ですよね。

ソフトウェア

3Dモデリング

モデリングはFusion360という、個人の非商用の用途での利用であれば無償利用できるものを使っています。

Fusion360用のプラグイン 3D Print Plus をインストールすると、スライサーソフトにダイレクトにボディーを転送できるように。
印刷前のstlファイルのエクスポート作業が不要になります。

スライサー

スライサーはCuraを使っています。
ネットの情報では Simplify3D(有料) > Cura > Slic3r の順でよいようです。

エクスプローラ拡張

STLファイルとGCODEファイルのモデルの外観を、エクスプローラで表示中にサムネイルでプレビューできます。

STLファイル

  • Marlin3dPrinterTool
    現在こちらを使用中。
  • Papa's Best STL Thumbnails
    Marlin3dPrinterToolで十分だったので試してませんが、処理が速く色や視点を調節できるようです。
  • stl-thumb
    試してませんがこれが一番シンプルかもしれませんね。

GCODEファイル

  • GcodeThumbnailExtension
    GcodeThumbnailExtensionはcuraが出力したgcode内のjpegをエクスプローラのサムネイルとして描画してくれます。
    ただしそのまま描画すると背景色が黒になってしまうので、少し修正して透明背景のPNGでサムネイルを描画するよう変えてみました。
    → 詳細は こちら
  • Microsoft PowerToys
    MSからも出ていますね。
    試してないですがgcodeから読み込むので背景は黒くなってしまうと思います。

ファームウェア

Ender3V2S1

ファームウェアは Ender3V2S1 を使っています。

Ender3V2S1についての詳細は こちら に記載しました。